三重
2023.12.14-15
皆様、はじめまして!今回のツアーのナビゲーターを担当する村山祐介と申します。私は三重に暮らす・旅するWEBマガジン『OTONAMIE』というローカルメディアを運営しています。『OTONAMIE』は「三重を世界に!世界の三重へ!」という、やや大袈裟なスローガンを掲げて2015年に本始動しました。現在8年目に突入し、約230名の三重県内各地の登録記者さん(私も含む)が、その地に暮らしているからこそ知っている魅力を記事にして発信しています。
まずは簡単に自己紹介をさせてください。私は三重県津市の新興住宅街に生まれ育ちました。最寄り駅までは徒歩10分で、比較的まちのなかだったので田舎や自然とはあまり接することなく18歳まで暮らしていました。当時は「三重県なんて、なにもない」と思う日々で、都会へのあこがれが強かったです。進学で京都へ、就職して東京で暮らしていました。実家が印刷会社を運営していて私は長男であることもあり、いつかは三重県に帰るつもりでした。なので、東京での都会暮らしを満喫する気は満々だったのですが、実情は仕事が忙しく、アパートと職場を往復する毎日。3年ほど東京で働き、三重県にUターンをして結婚を機に家業の印刷会社に入り、当時はWEBや印刷物のデザインを担当していました。
【目次】
今回のバスツアーの舞台は、紀勢・東紀州エリア。紀勢エリアで訪問する大台町は、紀伊山地に位置する里山。町全体がユネスコエコパークに指定され、また清流日本一に選ばれた宮川が流れるなど自然が豊かな町です。登山客や宮川でSUPを楽しむ人などが訪れています。
東紀州エリアで訪問する紀北町と尾鷲市は、切り立った山と海のダイナミックな景観のリアス海岸が続き、漁業や林業が盛んな地域。熊野古道伊勢路もあり、古道歩きの観光客も訪れています。
紀勢・東紀州エリアは人口減少が進んでいる地域であることから、地方創生への取り組みも盛んな印象があります。各エリアで企業や地域のプレイヤーが面白い取り組みをされています。それでは、早速1泊2日のバスツアーで巡る、訪問先の魅力についてご案内していきます。
まず、最初に訪問させていただく「株式会社ディーグリーン」は、webを中心としたデザインやマーケティングなどを手掛ける制作会社。代表取締役の東 城さんは地元で漁師の息子として育ちました。小さいころから学校に行くのが苦手で、学校に行かないなら仕事を手伝えといわれ、何万匹もの魚をさばくうちに魚を見るのも嫌になり、東京へ。そしてロンドンに留学。インターネット黎明期に海外でwebを学び帰国後は県内の広告代理店に勤務。その後独立し、地元紀北町で「株式会社ディーグリーン」を起業しました。
取締役の立花 圭さんは、埼玉県出身。アメリカの大学で観光学を学び、インターンで紀北町へ。そのまま紀北町観光協会の職員として働いた後に「株式会社ディーグリーン」に入社。担当は営業なのですが、WEBサイトのプログラミングも自分でこなすやり手タイプ。同社が手がける、地元の魚をつかった離乳食の通販サービス「mogcock」も担当しています。
ツアー当日は、おふたりから地域に求められるデザインやマーケティング、「mogcock」の挑戦についてお話しいただいたのち、参加者全員で古き良き漁師町の面影が残る長島地区の「魚まち」を散策します。
尾鷲市には2018年まで火力発電所があり、そこで保守や鉄関連の仕事を担っていたのが、尾鷲ヤードサービスです。今回、企業訪問させていただく「おわせむかい農園」は、その尾鷲ヤードサービスが新たに立ち上げた事業。里山至上主義を掲げ、向井地区の耕作放棄地を地元の方々と復活させ、“鉄から土に産業が変わる町”を実践しています。
発電所の撤退に伴い、「おわせむかい農園」を立ち上げたのが、代表の岡 文彦さん。創業当時、農業の経験がなかった岡さんは、専門家に学びながら、荒れてしまっていた農地を開拓していったそうです。現在は、地元の方々や地域おこし協力隊と連携しながら農業や観光農園、キャンプ場も運営。BBQをはじめとするイベントなども展開されています。
「おわせむかい農園」内にあり、一般社団法人つちからみのれが運営する「むむむ」は、子どもから、おじいちゃんおばあちゃんまで、みんなが集まれる地域の居場所。「やまのはこ」や「うみのはこ」等の施設があり、子ども向けの魚さばき体験や森の体験など、さまざまなイベントを通じて、地域の交流の場として盛り上がりをみせています。
現地では向井地区の甘夏畑や「むむむ」の見学のほか、岡さんから“耕作放棄地での新たな取り組み”をテーマにお話しいただいたり、伊東将志さんからは、“尾鷲の新しいまちづくりについて”うかがいます。
ツアー初日のハイライトは、地域で活躍する3名の方をゲストに招いて交流懇親会。夕食後、“わくわく!東紀州くらし”をテーマにトークライブ&ディスカッション。ツアー参加者同士の交流も育みます。会場となる「シェアスペース土井見世」を運営する豊田宙也さんは、東京生まれ東京育ち。地域おこし協力隊として尾鷲市に赴任し、人口約400人の漁村・九鬼町で一軒もなくなってしまった飲食店の復活と運営を担当。地元の方々と「網干場食堂(あばばしょくどう)」を立ち上げ、行列ができるほど評判の店に育てあげました。協力隊卒業後は、「おわせ暮らしサポートセンター」の副理事長として、空き家の管理や移住者の受け入れを行っています。
漁師の田中りみさんは、尾鷲市のとなり熊野市で、漁師の娘として育ちました。小さい頃から漁師になる憧れがあったのですが、当時の漁師界は男社会であり、周囲の反対もあったといいます。やがて高齢化の影響もあり、尾鷲や熊野の小さないくつかの漁村では、漁業を続けていくことが難しい状況になっていました。そこに東京で飲食店などを手がける会社「Gate(ゲイト)」が地元漁業に参入。魚の加工を手伝っていたとき、同社の社長・五月女圭一さんと出会ったことで夢が叶い、晴れて「Gate」が参入した地域の漁師になりました。また、同社の事業は、女性でも実践できる漁業として注目が集まっています。
柑橘農家と観光業を兼業する、津市出身の近藤久史さんは、地域おこし協力隊として熊野市に赴任。観光資源の開発を手掛けていた協力隊のとき、地元の農家から柑橘畑を譲り受けました。協力隊卒業後は柑橘農家を軸に、ゲストハウス「アタシカデイズ」を運営し、同施設のジュースバーやカフェなどでイベントも開催しています。
ツアー2日目の朝に訪問させていただく「尾鷲物産株式会社」は、マグロ漁やブリの養殖など第一次産業や加工・商品開発・流通といった第二〜三次産業をはじめ、海産物版の道の駅のような「おわせお魚いちば おとと」(第六次化)までを手がける先進的な会社。市場のニーズに基づいたマーケットインの考え方で、海外にも販路を伸ばしています。加工を行う工場もオートメーション化を進めるなど地域を代表する水産会社として知られています。
「発展してきた背景にあるのは、ノルウェーのアトランティックサーモンモデルです」と話すのは、常務取締役の玉本 卓也さん。東紀州で生まれ育った玉本さんは横浜の大学に通い、その後アメリカに留学。ヨーロッパを中心に世界を旅したとき、東京のような大都会は世界全体の1%もなく、99%以上が田舎だと感じるとともに都会への憧れは消え、生まれ育った東紀州にUターン。
「尾鷲物産株式会社」に入社し、国策としてアトランティックサーモンを世界中に販売しているノルウェーを視察。徹底したマーケティングとサプライチェーンの考え方、効率的な生産から加工、流通までの流れを同社に取り入れたメンバーのひとりです。
ツアー当日は、加工工場を見学したあと、同社の取り組みを映像で学び、“世界のおわせ”をテーマに玉本さんからお話をうかがいます。
続いて訪れるのは、伊勢神宮から熊野三山まで続く参詣道である熊野古道伊勢路。2004年に世界遺産にも登録され、国内外から多くの人が訪れています。当日は、「一般社団法人東紀州地域振興公社」の職員で熊野古道の語り部でもある福田美紀さんに“世界遺産と保全”についてお話いただきながら馬越峠を夜泣き地蔵まで歩くプチツアー。保全活動を行う地元の方々の熊野古道への想いを知り、その活動について学びます。
「一般社団法人AWAプロジェクト」は、大台町から空き家等の管理を受託するリノベーションのプロ集団。木工と現代アートを行う移住者、一級建築士であり古民家鑑定士1級を持つ設計士など、クリエイティブ思考のメンバーが在籍しています。今回のツアーでは、プロの職人さんと稲葉直也さんを始めとしたプロジェクトメンバーの指導のもと、網戸&障子の張り替えを体験するワークショップを体験。その後、「大台町と空き家の現状」をテーマにディスカッション形式でお話をうかがいます。
ちなみに稲葉さんは、朽ちた鉄や古びた木などを使い、家具や看板の製作を行ったり、築70年の旧診療所をリノベーションし、店舗&ギャラリーも運営する多才な方。私見ですが、県内各地でオシャレな看板を見つけると、だいたい稲葉さんの製作だったりします(笑)。
以上が、【三重県主催】『OTONAMIE』が案内する三重県南部地域の仕事と暮らし体感バスツアー/紀勢・東紀州編のバスツアーの概要です。最後にナビゲーターの自分から、皆さんに一言メッセージを伝えさせてください。
「地方創生」や「まちづくり」は便利な言葉だと思います(私もよく使いがちです)。でも、取材などを通じて感じることは、実際に地域で何か面白いことをしているプレイヤーは、そういった「地方創生」や「まちづくり」という概念より、もっと大切にしたい何か、楽しい何かがあるからこそ、アクションを起こしているということです。
そして、その様子がとても楽しそうに私には映るんです。その結果、地域を元気にすることに結びついていることは、本当に素晴らしいことだと思います。意味があるからやってみよう、楽しそうだからやってみよう。そういった思いはいつしか人に伝播し、気がついたら仲間が増えている。それが今回訪れる地域やゲストの方々に共通していることだと思います。
また、若い時にこのような方々と出会えることは今後の人生に行き悩んだときに、大きな力になるのかも知れません。少しでもご興味があれば、ぜひお気軽にご参加ください。ゲストやスタッフ一同、皆様と出会えることを楽しみにしてお待ちしてます!
村山祐介(OTONAMIE代表/寿印刷工業株式会社 専務取締役) 家業の印刷会社に入社しグラフィックデザインやWEBデザインを担当。民間発の地方創生プロジェクトとしてローカルWEBメディア『OTONAMIE』を立上げ、運営後はライターも行う。現在はアートディレクター、プロモーションディレクター、映像ディレクター等、各種ディレクション業務を中心に活動中。様々な事業の取材などを通じて、三重県の生産者や地域プレイヤー等との深いリレーションを構築するとともに、三重県の食や歴史・文化について官民のメディアで多くの執筆経験を持つ。三重県が主催する地方創生関連のイベントのファシリテータやゲストとして東京、大阪、地元三重での登壇経験もある。実績一例
参加のご応募について/下記リンクよりお申込み下さい ※お申込みの際に名古屋または津発着をお選び頂きます。
紀北町の「みえ熊野古道商工会」にて、“デザインでつなげる地域のカタチ”をテーマに、「株式会社ディーグリーン」が取り組んできたことや、田舎でも求められるデザインやマーケティングについて代表の東 城さんにお話いただきます。また“三重の魚を離乳食へ!mogcockの挑戦”をテーマに担当の取締役の立花 圭さんにお話をうかがいます。その後は、参加者の皆様とトークライブやディスカッションを行う予定です。終了後は、お二人にご案内してもらいながら、「魚まち」を散策します。]
地元の食堂でお昼ごはんを楽しみます。
向井地区の甘夏畑や「むむむ」の見学など、現地のフィールドワークを行います。“耕作放棄地での新たな取り組み”をテーマに代表の岡 文彦さんからお話いただきます。また伊東将志さんからは、“尾鷲の新しいまちづくりについて”お話を。その後、参加者の皆様とトークライブやディスカッションを行うとともに、一日の振り返り等、皆様にもお話いただきます。
会場となる「シェアスペース土井見世」を見学しつつ、地元の食材を使った料理などを説明いただきながら、みんなで食事の準備をして、夕食をいただきます。夕食後は、トークライブと参加者の皆様とのディスカッションタイム。ゲストには「おわせ暮らしサポートセンター」の豊田宙也さん、「Gate」の漁師・田中りみさん、「アタシカデイズ」を運営する近藤久史さんをお迎えします。
19:20 宿泊:尾鷲市内ビジネスホテル
2班に分かれて「尾鷲物産株式会社」の加工工場を見学したあと、どのように漁や養殖が行われ、加工や販売されているのかを映像で学びます。また“世界のおわせ”をテーマに常務取締役の玉本卓也さんにお話をうかがいます。その後は参加者の皆様とトークライブやディスカッションを行う予定です。
熊野古道伊勢路で随一美しいと言われる石畳みが残る馬越峠。“世界遺産と保全”をテーマに「一般社団法人東紀州地域振興公社」の職員の福田美紀さんにお話いただきながら、一緒に峠を歩きます。
「一般社団法人AWAプロジェクト」の稲葉直也さんにナビゲートしていただき、空き家リノベーションのプロに網戸&障子の張り替えを教えていただくワークショップを行います。終了後は、稲葉さんに“大台町と空き家の現状”をテーマにディスカッション形式でお話をうかがいます。
※当日の天候等の状況により、内容が変更になる場合があります。