福岡
2025.05.17
今回、旅で訪れる場所は、北九州市が誇る海の玄関口、門司港。明治から昭和初期にかけ栄華を誇り、かつては横浜や神戸と並ぶ日本三大港の一つとして名を馳せた歴史を刻む港町です。町のシンボルである「門司港駅」や「旧門司三井倶楽部」をはじめ、当時の面影を残すレトロな建物が織りなす美しい街並みでも知られています。
そんな古き良き港町を案内してくれるのは、北九州市出身の画家・牧野伊三夫さん。牧野さんは、画家としての活動のみならず、北九州市の魅力を描き出す情報誌『雲のうえ』の編集委員を務めるなど、町歩きもプロフェッショナル! そんな牧野さんに教えを請いながら、門司港の風景をみんなで描くスケッチツアーを開催します。
そんなツアーの参加募集に際し、牧野さんからみなさんに素敵なメッセージをいただきました。とにかく、もうこの原稿だけは絶対に読んでほしい。ノスタルジックな港町、門司港でみなさんと会えるのを楽しみにしています。
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【目次】
文・絵/牧野伊三夫
門司港は、明治時代の中頃から石炭などの積み出しをする国際貿易港として栄えた街。現在も駅舎や赤レンガの倉庫などにその名残を見ることができます。門司港駅を出ると、もうすぐ目の前に関門海峡の海があり、世界中からやってくる大型船がひっきりなしに行き来しています。こんなふうに大型船を間近に見ることのできる場所は、そうないのではないでしょうか。
東京の友人に僕の郷里でどこへ行ってみたいかとたずねると、たいがいの人が関門海峡だと答えます。それは本州と九州の間がどんなふうになっているのか見たいということのようです。ここは昔、源平合戦が行われた場所であり、宮本武蔵が佐々木小次郎と巌流島の決闘をした舞台ともなっています。幕末に、長州軍が通過する英国戦を砲撃して、長英戦争が起きたこともありました。そんな歴史のあるところですが、僕は帰省した折、天気のよい日に、ただボンヤリと船を見にやってくることがよくあります。
潮流の早いことでも知られるこの海峡は、激しいときは時速九キロほどで潮が流れ、潮の流れの方向に進む船は、まるでスケートでもやっているように、すうっとすべるように走ってくけれど、流れに逆らって進む船は全速力で、うんうんうなるように走っています。子供の頃、隣町の小倉で生まれ育った僕は、あるとき父に連れられて釣りに来て、そのとき投げたウキが川に流されるように移動するのにびっくりしたことを覚えています。
この海峡には、自動車用と、在来線と新幹線の鉄道のほかに、下関まで歩いて渡れる人道の四本のトンネルがあります。それと、関門大橋という橋が架かっているのですが、この場所が本州と九州が最も接近していて、簡単に泳いで渡れそうなくらい、下関の岸壁が近くに見えます。わずか十五分で向こう岸に着く連絡船も運航しています。ここは九州の玄関口でもあるのです。
さて、門司港でのスケッチ会。屋外で絵を描くのですが、いわゆる風景を描く写生の会ではありません。もちろん、海峡の風景や、行き交う船を描いてもよし、歴史的な駅舎やビルなどを描いてもよしです。それから、人を描いたり、海の近くまでせまる山を描いたりしてもよしです。しかし、ここで見た景色でなく、のんびりと海を見ているうちに想い出した何かや、まったく門司港と関係のない抽象画など描いたり、拾い集めたものでコラージュをしてもかまいません。
海を見たり、街を歩いてまわる方が楽しかったので、描かなかったということでもかまいません。想い出だけが残る、白いデッサン。画材は、水彩やアクリル、油彩の絵具、色鉛筆、クレヨン、なんでも好きなものをお持ちください。できれば、携帯用の椅子やイーゼルがあると便利です。巧さを競うのではなく、一日、海峡の街で画具をたずさえて、自分と向き合って、自由に描いてほしいと思っています。とはいえ自由に、と言われても、どうしたらよいのか、かえって混乱する方もいらっしゃると思います。
ずいぶん前にある写真集で、パリのセーヌ川の川畔に、ポーズをとっている女がいて、ベレー帽をかぶった画家がカンバスに描いている様子を見たことがありました。女は服を着ているけれど、画家が描いているのは裸の女。描き終えると、女は大笑いするだろうか。それとも怒り出すだろうかと心配になる、そんな一枚です。
絵というのは、自分のための遊びの道具であってもよいと思っています。肩をはって、まじめに、見た通りに描かなくてもかまわないのです。たとえば画家のゴッホなんかでも、糸杉の傍らに実際には存在しない教会を描き入れたり、夜の景色のなかに、反対方向の空にまたたく星を描き入れたりして、自分の思い通りに目の前にある風景とはちがう風景画を描いています。
絵というのは、描く人の心のなかにあるんです。集った仲間たちと一緒に描き、互いに絵を見せ合って、講評会で語り合う。そんなことが、これから絵を楽しんで描く、よいきっかけになるとよいなと思っています。春の一日、やわらかな光のなかで、港町の風にあたって愉快な時間を過ごしましょう。
牧野伊三夫
まきのいさお|1964年北九州市生まれ。画家。絵画のほか、音楽家との即興制作などを試みる。銭湯や酒場を訪ねてまわるのが趣味。著書に『のみ歩きノート』(筑摩書房)『へたな旅』(亜紀書房)、『僕は、太陽をのむ』(港の人)、『かぼちゃを塩で煮る』(幻冬舎)、『画家のむだ歩き』(中央公論新社)、『アトリエ雑記』(本の雑誌社)、『牧野伊三夫イラストレーションの仕事と体験記1987-2019』(誠文堂新光社)、絵本『十円玉の話』『塩男』(あかね書房)などがある。2022年度東京アートディレクターズクラブ原弘賞ほか受賞。美術同人誌『四月と十月』同人・発行管理人。北九州市情報誌『雲のうえ』編集委員。東京都在住。
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旅程のオリエンテーションのあとは、牧野さんからスケッチのレクチャーをしていただきます。そして、参加者全員で牧野さん考案の絵画体操でカラダをほぐし、自己紹介で心を溶かしてアイスブレイク。牧野さんが画材の使い方も教えてくれますので、初心者の方も安心してご参加ください。
いざ、町に出て、スケッチタイム! 参加者のみなさんには、ランチに牧野さんが愛してやまない大正10年創業「東筑軒」の名物“かしわめし”のお弁当をお渡しします。また、牧野さんのオススメスポットが詰まった門司港デジタルマップも配布。門司港のB面の魅力がたっぷり詰まった地図を片手に、ディープな町歩きもスケッチと一緒にお楽しみください。
ツアーのハイライトは、描き上がった絵を持ち寄っての講評会。牧野さんから感想やアドバイスをいただきながら、各々の作品について楽しく語り合います。その後は、お楽しみの乾杯タイム!いざ、交流会へ。同じ趣味を持つ仲間同士、牧野さんを囲んで楽しい宴がはじまります。
ツアーはこれにて一旦終了。なのですが、まだ飲み足らない、話したりない方は、牧野さんと一緒に終わらないナイトクルージングへ。きっと絶対に参加者全員、牧野さんのこと、門司港が好きになる! スタッフ一同、信じてやまない今回のツアー。鉛筆でもクレヨンでも水彩でも油彩でも何でもいい! さぁ、みんなで楽しく筆を取りましょう!
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HOW TO ACCESS_門司港までのアクセス例
飛行機、電車、そしてフェリー。門司港までのアクセス方法はさまざま。
ちなみに牧野さんのオススメは、東京〜大阪まで新幹線。大阪での観光を楽しんでから夜にフェリーで門司港へ。翌朝、門司港に到着するので、そのままツアーに参加が可能! ぜひ旅の過程も楽しんでくださいね!
■飛行機:約3時間(羽田~福岡 約2時間、福岡空港~門司港 約1時間)
福岡空港から 福岡空港--≪地下鉄≫--JR博多駅--≪新幹線≫--JR小倉駅--≪在来線≫--門司港駅
■電車:約40~50分
JR博多駅から JR博多駅--≪新幹線≫--JR小倉駅--≪在来線≫--門司港駅
■フェリー
○大阪南港から 約13時間
名門大洋フェリー 大阪南港--≪フェリー≫--新門司港--≪無料送迎バス≫--門司駅--≪在来線≫--門司港駅
○東京(有明)港から 約34時間
オーシャン東九フェリー 東京港--≪フェリー≫--新門司港--≪送迎タクシー≫--門司駅--≪在来線≫--門司港駅