三重
2023.09.23
これまで「ニッチャートラベル」では、過去2回にわたり、三重県松阪市を拠点に活動する地域特化型クリエイティブチーム「vacant」のメンバーと一緒に、“松阪偏愛モニターツアー”を催行してきました。嬉しいことに、彼らと出会ったことで、松阪との縁が点ではなく線となり、このたび3回目となるツアーを三重県のプロジェクトとして行う運びとなりました!
で、今回のツアーですが、過去2回の焼き直しではありません。旅のテーマはズバリ、“DISCOVER LOCAL MIE”。これまであまり光が当ててこられなかった三重県の地域にフォーカスし、 “まちづくり”に奮闘するクリエイターと交流を深めながら、その土地ならではの魅力を発見! これからの暮らしのあり方を考えよう!というのが、本ツアーの骨子です。
ちなみに今回のツアーは、満18歳~39歳 原則、10〜40代の方(※40代の方からも参加リクエストが多かったため変更になりました。)の方が対象です。 観光って「光を観る」(中国・易経の「観国之光」が語源と言われる)と書くように、土地の風土や人々の営みから国の新しい光を見つけること。
“旅を介して、地域の活性化や人々の交流に貢献する”をコンセプトに掲げる「ニッチャートラベル」的には、地域課題や社会課題に関心を持ち、“まちづくり”に興味を持つ人たちに、ぜひ会いたいと思っています!
もちろん、三重県のディープな魅力を知りたいという旅行者も、移住やUIターンを検討している方も大歓迎! 本ツアーを通じて、旅先への理解を深めてもらうだけでなく、参加者のみなさんと地域との新しいつながりを作れたら!と考えています。
さて、すっかり前置きが長くなりましたが、今回ツアーで訪れるのは、松阪市の中山間地域に位置する飯高町にある「宿泊・食事・喫茶 奥松阪」(以下、奥松阪)。地域社会や企業が抱える課題解決を生業にするデザイナーであり、「松阪市地域おこし協力隊」のメンバーも務める高杉亮さんが、今年1月にオープンした“まちづくり”の拠点です。
もともと、名古屋でデザイン事務所を立ち上げ、グラフィックデザイナー、フードスタイリスト、カメラマンとして、マルチにキャリアを重ねてきた高杉さん。そんな彼はなぜ、松阪市に移住し、地域コミュニティのハブとなる場所を山あいの町に開いたのか? 今回のツアーのナビゲーターを務めてくれる「vacant」の中瀬皓太さんと一緒に、高杉さんに話を聞きました。
【目次】
ニッチャートラベル(以下、NT)_早速ですが、高杉さんと松阪との出会い、移住したきっかけを教えてください。
高杉亮(以下、T)_今から7年ぐらい前になるんですけど、仕事のクライアントさんから仕入れ先に行くので、松阪に一緒に来てほしいと言われたんですね。そのとき訪れたのが、嬉野という町。市街地に近い割に自然があるし、豊かな暮らしがある感じがして気に入ったんです。
で、現地の人に「このあたりでいい物件が出たら、教えてください」と半分冗談で声がけしといたんですけど、半年後に本当に連絡をもらって。それで、「晩年は、田舎暮らしをしたい」と言っていた両親を連れて再訪したんです。現地で父親と「家族の別荘にしよう」と盛り上がって、古民家を手に入れ、リノベーションして遊び場を作ることにしたんです。
中瀬皓太(以下、N)_すごい縁! 高杉さん、勢いがすごいですね(笑)
T_で、しばらくすると今度は別荘の隣の家を取り壊して、代わりに太陽光パネルを建設するという話が地域で持ち上がったんですね。「それは嫌だな」と思って、地域の農家のおじいちゃんと一緒に、その家の所有者の方に会いに行って、建設を考え直してもらえないか直談判に行ったんです。そうしたら、「あなたたちがこの家を買うなら、好きにしていいよ」って言われて。「じゃあ」と思って、隣の古民家も買うことになったんです。
NT_エッ、もう一軒? そんなに古民家、いらないですよね?
T_もう一つ古民家を持つことになって、正直どうしようかな? と思いました。そのとき一緒に話をしにいったおじいちゃんがお菓子を作っていたので、その工場にしたらいいんじゃないかと考えたんです。それで菓子製造免許も取得して、古民家を菓子工場に再生していく過程をSNSにあげてたら、それを見てくれていた市役所の人たちと知り合って。その流れで「地域おこし協力隊をやってくれないか?」と声をかけてもらったんです。
NT_地域おこし協力隊って、定住が前提の仕事ですよね。本業とのWワークになるし、名古屋から移住しなくちゃならないし、かなり勇気がいる決断だったんじゃないですか?
T_もともと、妻の実家が松阪だったっていうのと、嬉野に別荘があったのは大きかったですね。あとは、仕事観の変化ですかね。都会でデザイナーとして仕事を続けてきたけど、果たしていつまで同じテンションでやっていけるのか? といつの間にか真剣に考えるようになったんですね。
プライベートでローカルコミュニティにあまりにも参加していない自分にも気づいて、それで本当にいいのだろうか? と。これから歳を重ねても楽しく暮らせるように地域に参加しないと孤立しちゃうじゃないかって。「10年先ぐらいに移住するのかな」って漠然とは考えていたけど、向こうから呼んでくださったし、これもタイミングかもしれないと思ったんです。
N_最初から地域のために! とか、“まちづくり”に燃えて移住したというわけではないんですね。
T_“まちづくり”って、本来、自分のためにやることなんじゃないかなと思うんです。自分の暮らしを楽しくしていって、結果として地域のためになればいい。だからこそ、未来に投資し、普遍的な価値を作って、共有していくような仕事をしていきたいなって。今すぐ役に立つとかそういう短絡的な意味でなくて、長い目で見たときに普遍性があるかどうか。
だから、誰もやりたがらないようなことも、ときにはやり続けないといけない。僕らが歳を取って、体が動かなくなったときにも楽しく暮らせるように。今、何をやるべきなのか? そういう仕事をしないと都会から移住してきた意味がないと思うんです。
NT_そうした思いもあって、「奥松阪」をオープンされたんですね。
T_以前、名古屋に住んでたときは、カフェでも何でもちょっと歩けば周りにあったけど、この町には自分の行きたい場所がなかったんですね。だったら、まず自分のために作ろうと。人間ってプライベートとパブリックの中間地点のような居場所が必要だと思うんですね。それに、みんなが集えるような場所がないと情報もコミュニケーションも生まれない。地元の人同士はもちろん、地域と外から来る人がつながれるような場所が必要だと思ったんです。
NT_中瀬さんたち「vacant」が松阪市街地で運営している「MADOI」にも通じるものがありますね。単にカフェや集会所としての機能だけでなく、地元の情報を再編集して発信したり、人と人をつなぐメディアのような役割を担う場所というか。ところで、どうして「奥松阪」と名付けられたんですか?
T_このあたりに住んでいる人が、市内の中心部に行くことを「ちょっと松阪に行ってくるわ」って言うのに、ものすごく違和感を感じたんです。飯高・飯南地域は市町村合併を経て、松阪市に編入されたという経緯があるので、みんなそれぞれの地域名にプライドを持ってるんですね。
飯高の人は、飯高・飯南と呼びますし、飯南の方たちは逆の言い方をします。ただ、この先ますます人口が減っていく、例えば30年後の未来のこととかを考えると、一緒に力を合わせていかなくてはいけない。そのときに町名で分断が起きるようなことがあってはならないし、もっと俯瞰して地域のことを考えるコンセプトやそれを体現する名前が必要だと思ったんです。
「奥松阪」って言葉なら、中山間地域のイメージも湧くし、ひとつにまとまれるんじゃないかって思ったんですね。僕が死んでも、何十年も呼び続けられていったら、本当の地名になるかもしれない。一般名称化していくといいなと思っています。
N_飯高・飯南に新しく「奥松阪」という名前の旗を立てたんですね。僕らも生まれ育った松阪を何とかしたい!という思いで、本居宣長の言葉を借りて「MADOI」という場所を作ったので、高杉さんの思いに共感します。場所を通して、地域の人たちにまとまりができたり、自分が暮らす町を、自分たち自身で面白くしようとする人が増えたらいいですよね。
NT_今回のツアーのハイライトは、高杉さんと中瀬さんに “まちづくり”への思いや松阪の魅力を聞くトークセッションです。松阪で生まれ育ち、偏愛たっぷりの視点で、市街地のコト・モノを再発見・再編集しながら“まちづくり”に奔走する中瀬さんと、高杉さんとのマッチアップ。個人的にもワクワクします。ツアーに参加してくれる若い人たちに、どんなことを伝えたいですか?
T_まず、どんな人でも“まちづくり”に関われるし、アウトプットする人だけが“まちづくり“をしているわけじゃないと伝えたいですね。「奥松阪」を始めたときに、売り上げの一定額を地域のために使えたらいいよねとスタッフと話していて。この秋に「こどもハッピーライブ」というライブイベントを開催するのですが、その制作費の一部もみなさんが飲んでくれた一杯のコーヒーや食事代から生まれています。
「奥松阪」に遊びにきて、楽しんでもらうことで、自然とまちに還元されていく。“まちづくり”の仕事って、なに? って思う人も多いと思うんですけど、そういう根本の部分や仕組みを考えたり、作ったりすることかもしれない。課題に対して何をやるか、どう行動するかは、その都度考えてやっていく感じなんです。
N_僕も高杉さんと同じく元々はグラフィックデザイナーだったんですけど、今の時代、表層的な表現だけで何かを解決できることって少ないですよね。それで、今は大風呂敷広げて「まちづくりプランナー」って名乗って、 “まちづくり”のなんでも屋を本気でやってます。
それから、僕はずっと松阪の中の人で、高杉さんは外から松阪にやってきた人。ふざけ倒して、街中で“まちづくり”やってる僕らとストレートに中山間部で“まちづくり”をやってる高杉さんとでは、質も環境も違う。そのあたりの対比というかコントラストも見えてくると、面白いトークセッションになりそうな気がします。
T_僕の場合、外からきていきなりふざけられないし(笑)、チームでやってるの羨ましいですよ。松阪にとっては、どっちのアプローチも必要だし、お互いの役割が違っていいんだと思います。中瀬さんたちが町の人たちとどう関わっているのかも興味ありますし、僕らの話を聞いて、いろんなプレイヤーが現れてくれると、課題解決の方法も増えるわけだし。このツアーを通じて、どんな人たちに出会えるか楽しみですね。
NT_なお、今回のツアーでは、松阪という地域への理解と愛着を深めてもらうべく、中瀬さんによる旅前講座「地域特化型デザインチームが考える三重・松阪の魅力 -松阪のA面とB面-」を、2023年8月26日(土)13時より大阪にて開催します。“地理” “資源” “人”を題材に、中瀬さんが松阪市をどうフォーカスし、その魅力に切り込んでいくのか? 郷土への純愛と偏愛に満ちた旅前講座は必見です!
なお、こちらはオフラインだけでなく、オンラインでも行いますので、みなさんぜひご覧になってから、本ツアーにお出かけください! それでは、最後に一言ずつ、このnoteを読んでくれている方にメッセージをお願いします。
T_「何のために仕事をするのか?」「自分の仕事が社会にどんな影響を与えられるのか?」。最近、そんな風に考える人たちが、昔より増えたんじゃないかって思うんです。具体的に何をしたらいいか、まだ見つかってないけど、そういうことを考えている人。きっかけが欲しい人と思っている人に来てもらえたら、何かしらのヒントは与えられるんじゃないかって思います。
N_先日、大学生の女の子が滋賀県からわざわざ「MADOI」を訪ねてくれたんですね。「どうやって街を変えようとしてるのか知りたい、聞かせてくれ!」って。それが、すごく嬉しかったんです。今回のツアーも、ネットやメディアではキャッチできない情報に触れられるはず。百聞は一見にしかず。とにかく来てみて! 損はさせないし、絶対後悔させないから。僕たちを信じて欲しいと思います。
高杉 亮(高杉アトリエ代表/松阪市地域おこし協力隊) 2011年にデザインプロダクション「株式会社高杉アトリエ」を設立。松阪市に移住し、2020年10月から「松阪市地域おこし協力隊」を兼務。当初から考えていたデザインを使った地域づくりを具現化し、地域課題の解決に取り組むプロジェクトを数多く手がける。2023年1月には、松阪市の中山間地域、飯高町に「宿泊・食事・喫茶 奥松阪」をオープン。秋には、近隣に新しく宿泊施設も開業予定。
中瀬皓太(vacant代表) 三重県松阪市を拠点に活動する地域特化型クリエイティブチーム「vacant」の代表社員。「純度の高い愛と自由=偏愛」をビジョンに掲げ、松阪市のこれからの“まちづくり”に奔走。2021年には、平生町に“遊べる集会所”をコンセプトに「MADOI」をオープン。2022年に刊行した『松阪偏愛マップ』をベースに、ニッチャートラベルと「松阪偏愛モニターツアー」を2回にわたり催行。今回のツアーのナビゲーターを務める。
参加のご応募について/下記リンクよりお申込み下さい。
●旅行料金:2,000円(税込、昼食付)
●募集人数:抽選で20名様
●応募期間: 2023年08月01日(火) 10:00~09月16日(土) 23:59
●参加の可否:ご参加頂ける方には、8月28日(月)以降順次正式お申し込みのご案内をお送りします。
※ご当選者から辞退する方がいらっしゃれば、次点の方々に順次ご案内致します。
参加対象者
●ツアー当日(2023年9月23日)に満18歳~39歳 原則、10〜40代の方(※40代の方からも参加リクエストが多かったため変更になりました。)
●8月26日(土)13時開催の事前講座「地域特化型デザインチームが考える三重・松阪の魅力 -松阪のA面とB面-」を受講いただける方)
●三重県及び松阪市への「移住」及び「仕事」に興味・関心のある方
●「地域活性」や「まちづくり」に興味・関心のある方、その課題解決の手法や事例について学びたい方
※事前講座「地域特化型デザインチームが考える三重・松阪の魅力 -松阪のA面とB面-」の受講は無料です。どうしてもご都合が悪い方はツアー参加までにアーカイブ動画にて受講が可能です。※当日は集合時間までに、各自JR松阪駅南口ロータリーまでお越しください。
JR松阪駅南口で集合したのち、貸切バスで飯高町の「宿泊・食事・喫茶 奥松阪」に向けてドライブ。バスの車内では、本ツアーのナビゲーターを務める「vacant」の中瀬皓太さんが事前講座「地域特化型デザインチームが考える三重・松阪の魅力 -松阪のA面とB面-」の内容をさらに深掘り。松阪の歴史や風土、文化についてレクチャーします。
バスにて「奥松阪」到着。参加者同士で自己紹介を行ったあと、高杉さんと中瀬さんによる“まちづくり”をテーマにしたトークセッションを開催します。トーク終了後は、全員でランチタイム。地域で採れた食材が使われた美味しいお昼ご飯を食べながら、高杉さん&中瀬さんを交えて参加者同士コミュニケーションを育みます。
昼食後は、珍布(めずらし)峠の入口に位置する「珍布サテライトオフィス」(コワーキングスペース、レンタルキッチン、レンタルオフィスを併設)や2023年6月より「松阪市地域おこし協力隊」として活躍する渡辺華奈子さんが開業準備を進めているベーカリーショップ予定地を視察。その後、高杉さんが今秋にオープンする宿泊施設予定物件を訪れ、「道の駅 飯高駅」でショッピングタイム。同所の運営にも深く関わる高杉さんのお話を聞きながら、地域の産品に触れたのち、バスで「豪商のまち松阪 観光交流センター」へと向かいます。
高杉さん、中瀬さんとともにバスで「豪商のまち松阪 観光交流センター」へ。車内では、高杉さんと中瀬さんへの質問タイムを設けます。
現地到着後は「vacant」が製作した『松阪偏愛マップ』を片手に市街地を散策。中瀬さんはじめ「vacant」のメンバーがみなさんをアテンドします!街歩きを楽しんだ後は、全員で「MADOI」へ。
ツアーは一旦、これにて終了! なんですが、解散後は、希望者を募っていざ打ち上げへ(※自由参加。夕食代はツアー料金には含まれません)。参加者みんなで親睦を深め、未来の暮らしについて語り合いながら、本居宣長&賀茂真淵の伝説を越える「松阪の一夜」を作りましょう! 「エッ、まだまだ、物足りないぜ!」という方は、その後『愛宕純愛マップ』を片手にナイトクルージングへどうぞ!
最後に。繰り返しになって恐縮ですが、今回のツアーは満18歳~39歳 原則、10〜40代の方たち(※40代の方からも参加リクエストが多かったため変更になりました。)を対象としています。みなぎる好奇心、熱いパッションを持ったみなさんと出会えることを楽しみにしています。それでは、9月! 松阪でお会いしましょう!