東京
2023.04.22
こんにちは! 「ニッチャートラベル」プロジェクトメンバーの柴田隆寛です。今回、みなさんにご案内するのは、渋谷区観光協会とマイクロツーリズムをテーマに企画している日帰りパッケージツアーの第3弾! 音楽、スポーツときて、今回のテーマは写真です。のっけから話が逸れて恐縮ですが、シブヤって世代によってイメージや捉え方が違うし、嗜好性や切り口によって、さまざまな表情を見せる稀有な町。極めて多面的というか、ある意味、捉えどころがない(まさしくダイバーシティ。地域によってカラーも違う)。だからこそ、誰もが関われる隙間のある町だと思うんです。懐が深いというか、思った以上に人に優しいというか。そんな余白のあるシブヤをカメラ片手に歩いて、自分の視点を確認したり、町の魅力を再発見したり。それぞれの参加者が写真というカタチで、町のエッセンスを持ち寄って交流することで、シブヤという町に愛着をもったり、写真をもっと好きになってくれる機会を作れたら!それが、今回のツアーの大まかな骨子です。
前置きがすっかり長くなりましたが、今回のツアーの企画立案から参加し、ナビゲーターを務めてくれるのは、写真家の平野太呂さん。『POPEYE』や『アンドプレミアム』(ともにマガジンハウス)といった雑誌をはじめとするメディアやクライアントワークをはじめ、写真集『POOL』(リトルモア)やインタビューと写真を手掛けた『ボクと先輩』(晶文社)、星野源さんとの共著『ばらばら』(リトルモア)など、著書多数! 最近では、釣り好きが高じて水辺の同人誌『off the hook』発行人としても活躍しています。というわけで、ここからは太呂さんにお話を伺いながら、ツアーのコンセプトと行程をご紹介!ぜひ、最後までご一読いただきツアーにジョインしてくれたなら幸いです!
【目次】
_今回のツアーでは、太呂さんがセレクトしてくれた映画『十二人の写真家』(1955年)を鑑賞することからスタートします。企画があの亀倉雄策さんで、監督が勅使河原宏さん。木村伊兵衛、土門拳、秋山庄太郎などなど、日本の写真界のビッグネームを追ったドキュメンタリー映画というだけで、もう鳥肌もの! しかも、レンタルも配信もない。ものすごく貴重な映画ですよね。
平野(以下、H)_「昔、原宿にあった『VACANT』で何かのイベントのときに観たんですけど、すごく興味深かったというか面白くて。昭和の写真家が撮影している姿なんて、なかなか見られないじゃないですか。木村伊兵衛のストリートスナップの撮り方とか、土門拳の子どもたちの集め方とか。自分的にすごく面白かったんですね。今回、シブヤの街をブラブラして撮影するって、いわばストリートスナップじゃないですか。町の中で写真を撮るっていうのは、どういうことなんだろう? ってあらためて考えた時に、この映画を思い出したんですね。彼らの姿を観たあとに町に出て写真を撮ると、撮るときの心持ちが変わったりして、それもまた面白いんじゃないかと。こういう機会でもないと配給から借りれない映画ですし、みなさん貴重なものが観られるハズです」
_今回のツアーでは、映画を観たあと、みんなでシブヤの町に出て、フィルムで写真を撮ります。現代はデジカメやスマホで誰でも簡単に写真が撮れてしまう時代。なぜ今回のツアーは、「フィルムで撮影しよう」と提案してくれたんですか?
H_今回のお題がシブヤだったので。それだったら町と関わりあいながら、やらないと嘘になるなと思ったんです。幸いシブヤには、「フォートウエノ」さんっていう、昔からお世話になっている町の写真屋さんがある。そういうお店を巻き込んでツアーをやるのがいいなって思ったんです。それにフィルムは撮るときから、写真との向き合い方が変わるんですね。デジタルで撮るとすごく枚数を切っちゃうし、一枚一枚のていねいさが減ってしまう。あと、フィルムの方がストリートスナップには向いていると思うんです。
_枚数が撮れる方が良さそうに感じますけど、違うんですね。ストリートスナップの魅力についても聞かせてください!
H_ストリートスナップって、クラシックなスタイルだと思うし、写真の基本のひとつだと思うんですね。僕も大学で写真を勉強しているときに、ド定番ですけど、ロバート・フランクの『The Americans』を観て、「わーコレが写真だよな」って感銘を受けたり、先ほどの映画には出てこないんですけど、戦前から90年代まで徹底的にスナップを取り続けた桑原甲子雄さんという写真家にもすごく影響を受けたんです。
ただ、現代は肖像権とかプライバシーの侵害とかの問題で、ストリートスナップ自体が成立しづらい世の中。今の風潮だといずれなくなっていきそうな気もしています。ただ、写真の大切なひとつのジャンルとして、存続してくれたらいいなって思ってるんです。暴力的に人にカメラを向けて、撮って逃げるみたいなことではなく。まだ自分の中にその答えはないけど、町のひとつの見方として、この機会にみんなに挑戦してもらえたらいいなって思います。
それから、写真のひとつの能力として、時が経って写真を観たときに、『当時って、こんな感じだったんだな』と思うことってあるじゃないですか。人の洋服とか化粧とか、背景にある看板とか何気なく映ってるもの。ストリートスナップは、そうした時代性が残りやすい写真だと思うんです。
_たしかに、そうですね。自分がそのとき感じた町の印象が投影されたり、記憶が記録されるというか。
H_デジタルやスマホになって、みんないいところしか写真に残さくなっちゃったんですよね。失敗したら消しちゃうし、いいものしか残さない。いいもの残そうっていうのは、人間の根源的な欲求だとは思うんだけど、それはそのときいいと思っただけで、何十年後に見たらあんまり意味がない写真だったなって思うこともあるわけで(笑)。逆にそのとき消しちゃった半目の写真の方がその人らしさが出てたとか。町に関しても、普段こんなところにレンズ向けないなってところで、あえてシャッターを切ってみるとか。何でもない写真、何気ない風景って、デジタルだと残りづらいけど、フィルムだとどうしても残るんですよね、物質として。
_フィルムだとどんな写真なのか、現像するまでわからないし、どうしたってカタチに残りますもんね。
H_フィルムで写真を撮らないようになって、世の中から失敗作がすごく減っていると思うんです。フィルムの時代は、どうしても世の中に物質として存在しちゃうんで。どんどん変わっている今のシブヤって、すごくフォトジェニックなんじゃないかなって思いますよ。視点を変えれば、20年後に今回撮った写真を見たら、すごく面白いんじゃないかなって。失敗とか恐れず、何てことない風景とかそういうところまで含めて、今回のツアーでは楽しんでもらえたらいいなって思います。
_ツアーでは、撮影後「フォートウエノ」にフィルムを出したのち、太呂さんと上野さんのトークセッションを聞いて終了。別日に、みんなが撮った写真を観ながら、講評会を行います。みんなで写真を観る意味って、どんなところにあると思いますか?
H_写真を人に見てもらうっていうのは、怖いことではあるんだけど、そこは乗り越えなくてはならないところだと思うんです。今回は僕が見たりとか、講評会があることで人に見せる前提で撮るっていう、ひとつの態度ができると思うんです。自分は誰に向けて写真を撮っているのか、なんで今シャッターを押してるのか? すごくカッコつけてるなあとか(笑)。より写真を撮ることに自覚的になれると思うんです。モヤモヤした気持ちでもいいので、みんなに持ち帰ってきてもらえたらうれしいですね。
_他者とコミュニケーションを深めることで、写真を通して、自分ではわからない新しい自分に気づくことができるかもしれないですよね。
H_人に見せることで、全然違う角度で話してくれる人がいるかもしれないし、視点を褒めてくれる人がいるかもしれない。人に見せると、発見があると思うんです。なかなか今回のように人に写真を見てもらう機会もないと思うので、講評会も楽しんでもらえたらいいなと思います。
_さっきも話に出ましたが、どんどん失敗作を世に残した方がいいですしね(笑)
H_撮影に出かける前にまた話しますが、いろんなやり方があると思うんです。例えば、空とか看板だけ撮るっていうテーマを決めたり、反対にその時の感情に従って撮るとか。どう撮ったのか? 最初の思惑とどう変わっていったのとか。そのあたりを講評会では聞いてみたいですね。撮り終えた結果としての写真だけでなく、プロセスも共有しながら、みんなで一緒に写真を膨らませていけたらいいなと思っています。
平野太呂
ひらの・たろ|1973年、東京都生まれ。武蔵野美術大学で現代美術としての写真を学び、その後講談社でアシスタントを務め、より実践的な撮影技法を学ぶ。スケートボード専門誌『SB』立ち上げに関わり、フォトエディターを務める。広告、CDジャケット、ファッション誌、カルチャー誌で活躍中。2004年、渋谷区上原にギャラリー「NO.12 GALLERY」を立ち上げ、2019年まで運営。主な作品に写真集『POOL』(リトルモア)、インタビューと写真を手掛けた『ボクと先輩』(晶文社)、星野源との共著『ばらばら』(リトルモア)など。水辺の同人誌『off the hook』発行人。
※集合時間までに各自でナビタイムジャパン本社までお越しください
表参道駅から徒歩3分。「ナビタイムジャパン」本社1Fにて、旅程のオリエンテーションを行います。平野さんから撮影についての心構えや写真に関するレクチャーを受けた後、プロジェクターで映画『十二人の写真家』を鑑賞。その後、参加者同士で自己紹介を行い、映画の感想を語り合あいながら交流を深めます。また、会場ではフィルムカメラをお持ちでない方のために、「写ルンです」(27枚撮り/1人1つまで)を販売。初心者の方でも安心してご参加いただけます。併せて、 会場ではフィルム(36枚撮り/1人1本まで)もお買いお求めいただけます。
『十二人の写真家』提供者:草月会
渋谷の街を自由に散策しながら、お好きな場所でストリートスナップをお楽しみください。ツアー参加者には、写真に関連する書店や喫茶店など、平野さんのオススメスポットをまとめたデジタルマップを共有。こちらを参考にしながら、今まで知らなかった渋谷をぜひ歩いてみてください。また、参加者と平野さんが交流する時間も設けていますので、そちらもお楽しみに!
満足いくまで写真を撮ったら、「フォートウエノ」にフィルムを提出。現像した写真は、後日開催する講評会にてお渡しします(Lサイズのプリントとスキャンデータ及び撮影フィルム)。
※ 講評会に参加できなかった方には郵送を予定。フィルム1本分の現像・プリント代は、ツアー料金に含む。2本目以降は、各参加者の実費となります。
ゲストに「フォートウエノ」2代目店主上野利之さんをお招きし、平野さんとのトークセッションを行います。デジタルとは違う、アナログ写真の魅力。そして、渋谷という町や写真の未来についてなどなど、お二人に熱く語っていただきます!
ツアーで撮影した写真の講評会を「ナビタイムジャパン」本社で行います。講評会では、参加者全員に撮影時のテーマやプロセス等を発表していただき、多様な視点と表現をシェアしながら、平野さんと一緒に写真について楽しく学びます。また、講評会は、遠方にお住まいの方も参加できるよう、リアルだけでなくオンラインでも開催するので、ご安心を!
同じ渋谷という町を撮影するからこそ、ハッキリ見えてくるスタイルや写真の違い。自分の視点が見える化するツアー、写真好きの方はもちろん、これから写真を始めたいという初心者の方も、ぜひご参加ください!