三重
2023.01.14
はじめまして。誰も知らないでご存知、〈vacant〉(バカント)の中瀬理恵と申します。〈vacant〉とは、三重県松阪市在住、明るい5人組の地域特化型デザインチームである。今回、松阪偏愛モニターツアーの企画&現地ガイドを務めさせていただくわけです。早速ですが、見どころの前に、まず松阪がどんな町なのかご紹介します。
縦に長い三重県のちょうど真ん中あたりが松阪。帯状に広がる土地柄、一言で松阪といっても商店や飲み屋街で賑わう駅付近から、キツネや鹿が日常的に出没する山や川に囲まれた自然豊かな田舎まで、さまざまな習慣や文化が混在する町。その歴史は深く濃く、この町を愛した偉人たちも多い。
まず外せないのが、蒲生氏郷。「松坂城」を築き、敵から町を守るだけでなく、寺や神社を作り、経済的にも発展するよう町を作り上げた戦国武将。今でも彼の痕跡を町のいたるところで見ることができる。
続いては、松阪が“豪商の町“と呼ばれる礎を作った三井高利。この町が発展したのは、彼の存在があったから。そんな三井高利が生誕して、今年でちょうど400年。そして、来年は三井越後屋創業350年のアニバーサリー。 “現金掛け値なし“、“店前売り“といった今の商売の当たり前を作った彼から学ぶことは多すぎる。そして、この機会に松阪という町や松阪もめんを、今一度見つめ直したいと思っている。私たち得意の偏愛たっぷりの目線で。
そして、松阪を代表するもうひとりのレジェンドといえば、本居宣長。人間のどうしようもない情けなさや悲しみ、そして可愛らしさを“もののあわれ”という言葉で表し、たくさんの和歌も詠んだ江戸時代の国学者だ。ところで、彼が描いたまだ見ぬ日本や実在しない世界を描いた地図を見たことがあるだろうか? 国学者の顔のほかに、医者でもあり、文献学者や言語学者でもあり、頭ぶっ飛びまくりの稀代のクリエイター。知性と興味に満ち溢れた彼の人生に会いに行こう。
また、青春時代をこの町で過ごし、名実ともに日本を代表する映画監督となった小津安二郎も松阪を愛したひとり。もしかしたら、『東京物語』や『秋刀魚の味』といった素晴らしい作品も、この町を歩きながら思いついたのかもしれない。「あぁ、これを伝えたかったのかな」なんて感じながら、町歩きを楽しんでもらえたらと思う。
ところで、どうしてこの町が好きなのかを改めて考えてみた。家族や友人がいるからか? 生まれ育った場所だからなのか? いやちょっと違うな。ほどよい田舎だからいいのかも。買い物にも不便せず、どこへ行くのもそんなに遠くない。人もほどよい多さで混まないし、雪が積もりすぎることも、雨が降りすぎることもない。今まではコンプレックスだったけど、よくよく思えば飛び抜けたものがないというのもアリじゃん。デッカい大仏はないけど、いつも行ってる酒場も、仕事帰りに寄る喫茶店も、昔からあるあの店もこの店もあの人もこの人も。これって、ちょっとした自慢だし観光資源じゃない?
もともと商人の町として発展し、お伊勢参りの人々をもてなす宿場町として栄えたこともある松阪には、今でもチャキチャキの商売人が多い。そして、何より食べ物もおいしい! 海の方へ行けば新鮮な魚、牡蠣、あおさのりetc.……。山の方へ行けば、椎茸栽培が盛んで、肉厚でジューシーだ。そして、やっぱり肉。松阪牛はもちろん、松阪豚や少しずつ注目を集めている鶏焼肉は、われわれの町のソウルフードと言ってもいい。そのほかにも、いいものはいっぱいある。ただ、残念ながら知られていない。よく目にする情報誌では得られない魅力がギューギューなのだ。
この町に「何が必要で、何が必要じゃないのか?」。日々、そんなことを考えながら、松阪を盛り上げるという課題に挑んでいる〈vacant〉。偏愛と純愛を兼ね備えた“地域特化型デザインチーム“である。そんなわれわれが活動拠点として、昨年11月にオープンさせた場所が「MADOI」。本居宣長が夜な夜な仲間と集い、和歌を詠んだり、勉強したりしたというサロン、“円居“(マドイ)からその名を頂戴した。いろんな人が出入りし、学び、遊ぶ。カフェ機能も充実した町の集会所となることを目指して作った場所。今回のツアーも、ここが集合場所。みんなで松阪の名物駅弁「モー太郎弁当」を食べてから、町に繰り出す。
ちなみに今回のツアーは、私たちの作った『松阪偏愛マップ』の具現化を目指した。私たちの町の自慢や偏愛度を表す、独自基準”バカン度”でスポットを選定。ちなみに、“おばあちゃんが今もある、あの店の思い出話を孫にできる”が、最重要加点ポイントのバカン度だ。
きっと町づくりには「珍しいハコ」ではなく、「人と人」をつなぎ、自然とコミュニケーションが生まれるツールが必要なんだと私は思う。例えば、『松阪偏愛マップ』のようなメディア、遊びに来てくれた人と地元の人が喋れる「MADOI」のような場所とか。外の声を聞くことで、私たちは地元の価値を理解する。訪れた人には、歴史や人物を知り、今を生きる町を体験してもらう。飾ることなく、等身大でおもてなしすることで訪れた方に本当の松阪を楽しんでもらう。背伸びをして伝えるつもりもないし、PRが目的でもない。一言でいうなら、町おこしならぬ、人おこしだ。
日帰りもよし、1泊するもよし。私だったら1泊して、翌日は「伊勢神宮」に初詣に行っちゃうな。「外宮」のある伊勢市駅まで電車で20分、30分ちょっとあれば、お参りに行ける。かつては宿場として栄えた松阪。今回のツアーに参加すれば、現代版のお伊勢参りだって楽しめる。
わたしが好きなほどよい田舎、松阪の魅力。行政の情報誌や観光雑誌では、あまり取り上げられない、いつもの店や当たり前をローカル目線でギュッと濃縮してつくったニッチャートラベル。みなさんにお会いできることを、メンバー一同楽しみにしています!
私は商店街にある小さな食堂の店主/理恵
お店を作るのが好きで最近7軒目の店をはじめたところ。と書くと、なかなかのヤリ手と思われるかもしれないが、決してそうではない。ほとんど辞めている。辞めては始め、また辞める。7軒目にしてやっと気づいたことがある。店づくりとは町づくりかも。いい町にはいい店があり、古くから続く老舗と呼ばれる店も、若い人たちが始めたこれからの店も町の色になっていく。だんだん根付いたそこは生活となり、そこを目指して誰かが訪れれば思い出となる。だから辞められないんだ店づくり、いや町づくりは!
“馬鹿“担当/羽根ちゃん
本職はWEBデザイナーとか言って気取ってるけど、ただのオタク。みっちり偏愛でできあがっている。みんながちょっとでもトレンドを追っかけたなら、流行レフリーの笛を吹く。そーだったそーだった、ごめんよ羽根ちゃん。私たちがやるべきなのはコッチ!偏ったあったかい愛って素敵だね。みんなに伝われーって思っている。
チャーミー担当/じゅんこ
そんな私たちの偏愛をカタチにしてくれる、グラフィックデザイナーだっ。彼女の作るものがクライアントの人生をどれだけ豊かにしたことだろう。本人がいちばん気づいてないけど、文字ひとつやイラストの隅々に感じるデザインへの純愛。それを『松阪偏愛マップ』に注ぎ込んでくれた。
税理士くん/よーへー
採算度外視なメンバーを支える最年少メンバー。やりたいことが頭の95%を占める私たちが、後回しにしてしまう大事なお金マネーの管理人。長く馬鹿やりたいんだったら、ちゃんと計算しなくちゃね。気づきました? そう、彼が〈vacant〉のキーマン。前へ進むためには目をそらしちゃいけない現実をいつも見せてくれる(泣)
vacant&松阪偏愛ツアーの首謀者・代表/中瀬
明るい仲間4人を集めたのが、サッカーとジャパニーズラップが好きな社会不適合者。毎日天井を眺めながら過ごすことを喜びとし、マイペースの代名詞として生きる。かと思いきやクリエイターとして売れたいのでややこしい。社会にハマれない彼の繊細な気付きはいつも頭が祭っている我々を鎮座させる。最近“町づくりプランナー“を名乗った彼に期待している。異常なまでの地元愛が際立つ。
※集合時間までに各自で集合場所MADOIまでお越しください
松阪駅から徒歩5分、〈vacant〉が運営するベースキャンプ「MADOI」にて、『松阪偏愛マップ』を片手にツアーガイダンスを行います。また、ランチには、「駅弁のあら竹」の松阪名物駅弁“モー太郎弁当”を食べながら、ぴーちゃんこと新竹浩子社長からお話を伺います。
松阪が生んだ国学者、本居宣長の墓地のある「樹敬寺」を通りながら、記念館へ移動。通常とは違う視点で学芸員さんに施設内の展示などをガイドしてもらいます。偏愛ツアーでしか聞けない特別な解説が聞けるかも!
ふたつの施設では、偏愛ではなく純愛を体験。松阪の王道=純愛を知ることで、今ツアーがどれだけニッチかを体感してもらえること間違いなし。松阪市観光交流課の福山桂さんをお招きしトークセッションも実施します。
『松阪偏愛マップ』に掲載したスポットを中心に散策します。〈vacant〉ならではのガイドで、ローカルな体験をお届けします。「本居宣長宅跡地」「三井家発祥地」、「豪商ポケットパーク」「丸中本店」などなど。
スタート地点の「MADOI」へ戻り、ツアーの振り返りや〈vacant〉メンバーや参加者同士のコミュニケーションを楽しむ時間とします。
松阪牛焼肉の有名店「一升びん」にて、市外にはほとんど出ない松阪牛のホルモンや25度の甲類の焼酎をオリジナル梅シロップで割った名物の“梅割り”など、ここでしか味わえない食体験を!※ご夕食:セットメニュー・ドリンクお一人様1杯付き
平生町店のすぐ隣は松阪唯一の歓楽街の愛宕町。その昔、赤線地域で遊郭だった松阪の夜の文化がつまった街をご案内します。「ちょろ松ふみ」や「スナック一(はじめ)」など。まだまだお付き合いいただける方、もっともっとディープな松阪を体験したい方はぜひ!